本作には、「大和」以外に主役がいます。それは「雪風」(画面中央の陽光が指す艦)です。「雪風」は「陽炎」型駆逐艦19隻の中で唯一終戦まで生き残った艦です。スラバヤ沖海戦から大和特攻まで主要な作戦に参加しながら大きな損傷を受ける事なく活躍した「幸運艦」でした。その一方で、「大和」や「武藏」、航空母艦「信濃」の最期を看取った艦でもあります。戦後、「雪風」は復員輸送艦として15回の復員輸送任務を遂行し、1万3千人以上を運び、その後は戦時賠償艦として中華民国へ引き渡され、「丹陽」として激動の歴史に立合いました。昭和44(1969)年夏に「丹陽」は台風により座礁し、解体されました。昭和46(1971)年12月8日、中華民国政府よりその舵輪と錨のみが返還されました(不沈艦生涯(新版)203-204頁参考)。
タイトルの「26311208」は神武紀元 2631(1971)年12月8日を意味する数字で、「雪風」がようやく役目を終え日本に戻って来た日を指しています。つまりこの作品に描かれた艦隊は艦たちの魂で、最後に合流した「雪風」の魂と共に、果たすことの出来なかった任務を遂げるべく沖縄へと向かう様子を描いているわけです。奇しくもその翌年、沖縄は日本に返還されることになるのです。
作品仕様
制作年: | 平成28年 |
技法: | 鉛筆画 |
サイズ: | 455×652mm(M15) |
所蔵: | 株式会社 丸福 所蔵 |